【死亡リスク】山形コホート研究から見えたラーメンとの距離感と向き合い方

日本ではラーメンは非常に人気が高く、うどん・そばよりも家計支出が多いという調査もあります。一方で、ラーメンおよびそのスープには食塩が多く含まれるため、頻繁な摂取は脳卒中や胃がんなど「食塩関連疾患」のリスクを通じて死亡リスクに影響する可能性が指摘されていました。

ただし、個人レベルでのラーメン摂取頻度と健康アウトカム(とくに総死亡)との関連は、これまで十分に検討されていませんでした。山形大がラーメン摂取頻度と総死亡リスクの関連を、山形コホート研究と題して論文を発表していました。(R)

目次

実験概要

  • 研究デザイン:観察研究(前向きコホート)
  • 対象:山形コホート研究の質問票に回答した6,746名(男性2,361・女性4,385)。追跡1年以内に死亡した21名を除外し、6,725名(男性2,349・女性4,376)を解析対象に。平均年齢59.7±6.7歳、追跡は~2023年12月まで。アウトカム(死亡)は死亡票から把握。 
  • 曝露(主説明変数):ラーメン摂取頻度(過去1年の平均)。回答9段階を集約し4群に分類:
    (月1回未満/月1–3回/週1–2回/週3回以上)
    さらに、スープの摂取量を「半分以上」と「半分以下」で二分化。 
  • 調整因子(共変量):年齢、性別、喫煙、飲酒、スープ摂取量、糖尿病、高血圧、脂質異常症。 
  • 統計解析:Cox比例ハザードモデル。参照群は「週1–2回」(調整後リスクが最も低かったため)。性別、年齢(<70/≥70歳)、スープ摂取量、飲酒のサブグループ解析も実施。ただしサブ解析は多重性補正なし(探索的)。有意水準P<0.05。 

山形の住民を対象に、自己記入式の質問票で過去1年のラーメン頻度とスープをどのくらい飲むかを尋ね、医療データ(定期健診)で高血圧・糖尿病・脂質異常などの有無も把握しました。その後、2023年12月までの間に誰が亡くなったかを死亡票で確認し、ラーメン頻度の違いで死亡までの速さに差があるか(=ハザード比)を統計的に比較しました。

解析対象6,725人のうち男性は34.9%、平均年齢は59.7歳でした。ラーメン頻度の分布は、月1回未満18.9%/月1–3回46.7%/週1–2回27.0%/週3回以上7.4%。頻度が高いほど、男性が多く、年齢が若く、BMIが高く、喫煙・飲酒が多く、スープを半分以上飲む人も多く、糖尿病・高血圧の合併がやや多い傾向でした。

年齢や性別、喫煙や飲酒、スープ量など死亡に影響する他の要因の違いを統計的にならすことで、できるだけラーメン頻度そのものの差を見ようとしたものになってます。   

解析では、「週1–2回」のグループを基準として、他の頻度グループの死亡リスクを比較。また、サブグループ解析として、男性・女性、70歳未満・70歳以上、スープ「半分未満」・「半分以上」、飲酒あり・なしに分けて、それぞれ同様の比較を行っています。

どんな結果が出た?

全体で見たとき

どう解釈すべきか

「月1回未満」でもリスクが高い群があるのはなぜ?

  • 全体として、ラーメンをたくさん食べる人(週3回以上)は死亡が多い傾向はあるものの、偶然のぶれと区別できるほど強い差ではなかった(統計的に有意でない)。ここだけを見ると、「ラーメンを週3回以上食べると誰でも寿命が短くなる」とは言い切れ。 
  • 「条件別に分ける」と」(男性・若年・スープ多量・飲酒あり)一部の人たちで差がはっきりする。これは、「ラーメン頻度」そのものに加えて、スープの量(=食塩の摂取量)や飲酒といった生活習慣の組み合わせが、体に与える負担を増やして死亡につながる病気(循環器病・がんなど)を引き起こしやすくしている可能性を示唆します。ただし、この研究では病気の発症経路までは直接追えておらず、「なぜそうなるか」の因果は断定していません。   

    一見「少ないのにリスク高め」は不思議ですが、著者らは、高血圧や糖尿病などを指摘されて「控えるように指導」された人がラーメン頻度を減らしている可能性、あるいはフレイル(虚弱)の影響など、健康状態が悪いから頻度が低いという逆向きの因果(逆因果)の可能性に言及しています。 
  • さらに、頻度が高い人ほどスープを多く飲む傾向があり、食塩のとり過ぎが血圧や胃粘膜への影響を介して脳卒中や胃がんなどのリスクを上げ、それが死亡リスクに反映される、という仮説が背景にあります(背景説明としてPDF内に根拠が示されている)。 

まとめ

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