それなりにアンチエイジングの情報について感度の高い人なら摂っているであろうスペルミジンですが、オートファジーを促す事で老化対策となっているのではないかという論文があったので共有します。(R)
個人的には、ひきわり納豆やスペルミジンのサプリメントで摂っております。
さっそくではありますが、論文の中を見ていきましょう。
スペルミジンとは?
スペルミジンは細胞が自ら合成する小分子で、DNA・RNA の安定化やエネルギー代謝を支えています。ところが年齢とともに体内量が下がり、細胞の掃除機能=オートファジーが衰えます。オートファジーは、壊れたタンパク質や老朽化した細胞小器官を分解してリサイクルする仕組みで、機能低下するとがん、心臓病、神経変性など老化が進みやすくなります 。
どう効くのか
スペルミジンは EP300 というオートファジーのブレーキ役の酵素を抑え、細胞に「大掃除」を促す点でラパマイシン(mTOR 阻害薬)と同程度のパワーがあります 。掃除が進めば細胞内のゴミが減り、組織全体の働きが若返ります。
論文の位置づけと目的
この論文は一次実験の詳細を報告する論文ではなく、スペルミジン(ポリアミンの一種)が加齢で減ること、外因的補給がオートファジーを介して寿命・健康寿命を延伸し得ることを、多数の既報データと最新の疫学研究をまとめて論じるコメントリー(短い総説)です。著者らは「スペルミジンを加齢依存性ビタミンとみなし、高齢期には外部から補うべきだ」という仮説を提唱しています 。
実験・研究概要
この研究は、複数の実験・調査を統合したレビュー的な内容を持っています。具体的には次のようなアプローチが取られています。
モデル生物を用いた実験
- 対象:酵母、線虫(C.エレガンス)、ショウジョウバエ、マウスなど。
- 内容:スペルミジンを外部から与えると、寿命が延びたり、心臓や神経、免疫系が保護されたりするかどうかを調べた。
- オートファジー(細胞内の不要物を分解する働き)が活性化されているかも重要な観点として評価。
人間を対象とした疫学調査
- 第1調査:45~84歳の829人を15年間にわたって追跡。5年ごとに食事内容(スペルミジン摂取量)を確認し、がんや心疾患による死亡率との関係を分析。
- 第2調査:39~67歳の1770人を13年間追跡。同様にスペルミジンの摂取量と健康寿命・生存率の関連を調査。
モデル | 介入内容 | 主な結果 | 特記事項 |
酵母・線虫・ショウジョウバエ | 餌にスペルミジン添加 | 寿命延長 | オートファジー関連遺伝子を欠損させると効果消失 |
マウス | 長期経口投与 | 寿命延長・心機能改善・抗腫瘍免疫強化 | 心筋または腫瘍細胞でオートファジーを阻害すると効果消失 |
ヒト前向きコホート① | 45–84歳 829名・15年追跡 | がん・心血管疾患を含む総死亡リスク低下 | 食品摂取頻度調査から推定 |
ヒト前向きコホート② | 39–67歳 1,770名・13年追跡 | 同様に総死亡リスク低下を再現 | |
安全性試験 | 高齢者に植物抽出スペルミジン | 良好な忍容性 | マウスの終生投与でも副作用報告なし |
明らかになったこと
- スペルミジンは EP300 など複数のアセチル化酵素を阻害し、ラパマイシンと同程度に強力なオートファジー誘導能を示す 。
- 酵母~哺乳類に至るまで、外因的スペルミジン投与はオートファジー依存的に寿命・健康指標を改善する 。
- 加齢に伴い体内スペルミジン濃度は低下するが、健常な 90 歳超の長寿者では若年並みの濃度が維持されている 。
- 食事由来スペルミジン摂取量が高いほど総死亡が少ないという相関が、互いに独立した 2 つの大規模前向きコホートで確認された 。
- マウス・ヒト試験を通じて 長期補給の安全性は高い と報告されている 。
- スペルミジン供給源は①細胞内合成②腸内細菌産生③食事摂取であり、腸内プロバイオティクス LKM512 やアルギニン併用により腸内産生を増強できる 。
- 未加工植物食品や発酵食品にスペルミジンが豊富である 。
不明確・未解決な点
- ヒトでの至適血中スペルミジン濃度・推奨摂取量は未確定。疫学研究では血中濃度を測定しておらず、食事量との相関しか示されていない 。
- ポリアミン輸送体や排泄経路など哺乳類での体内動態は詳細不明で、輸送メカニズムの解明が必要 。
- 超高用量・長期摂取時の理論的リスク(細胞内代謝破綻等)は否定できず、用量依存安全域の精査が求められる 。(まあ、理論リスクなんでそこまで心配しなくていいとは思いますけどね)
- オートファジー活性やタンパク質アセチル化を 人の血球で定量し、スペルミジン摂取量と縦断的に突き合わせる臨床バイオマーカー研究 が未実施 。(要は人ではどのくらい摂るのが良いのか判明していないということ)
- ヒト介入試験(無作為化比較試験)による因果関係の証明が不足している。現在は関連づけレベルのデータに留まる。
どこから補給する?
食事:ドリアン、シイタケ、ピーマン、小麦胚芽、アマランサス、ブロッコリー、納豆、熟成チーズなど未加工植物食・発酵食品が豊富 。
腸内細菌:ポリアミン産生菌 Bifidobacterium LKM512 をマウスに与えると血中スペルミジンが上がり、炎症が抑えられました。前駆体アミノ酸アルギニンを一緒に投与すると効果倍増 。(LKM512とアルギニンの入ったヨーグルトも販売されてますね)
サプリメント:植物抽出や合成スペルミジン製剤は臨床試験で安全性が確認されつつありますが、最適量は検証中です 。
安全性と「ビタミン化」
著者らは、「若い頃は体内合成で足りるが、加齢で不足する。だから外部補給が必要になる点でビタミン的」と位置づけています 。現時点でマウスもヒトも顕著な毒性は確認されていませんが、超高用量が細胞恒常性を乱す可能性は理論上排除できず、安全域の上限を見極める必要があります 。まあ、市販のサプリメントの量程度は問題ないと思いますが。
まとめ
スペルミジンは加齢で減少しますが、補えば細胞の掃除力が復活し、多生物種で寿命と健康指標を伸ばすことがこの論文では示されています。人でも高摂取群は死亡率が低く、安全性も高いと報告されています。一方で、至適量・長期毒性・ヒトでの直接的因果証明など不明点も残ります。まあ、現段階では、スペルミジンを多く含む食品やサプリメント、腸内細菌を活用し、過不足なく摂り入れることが現実的なエイジングケア戦略となりそうです。
iHerbで売られているスペルミスのサプリメントで現状、量と値段のバランスが1番優れていたもののリンクを置いときます。