ビタミンDはアンチエイジング界隈では今では必須サプリのようなイメージがあります。様々な有益な効果が確認されており、個人的にもお世話になっています。
本研究は、「どれくらいのビタミンD摂取量が、血中ビタミンD濃度を低すぎず・高すぎず、適正な範囲に保てるか」を明らかにすることを目的とした論文がありましたので詳しくまとめてみました。(R)
実験の概要
研究は2つの方法で行われました。
- 過去の108のビタミンD摂取と血中濃度の関係を報告した文献データの統合解析
- カナダの健康増進プログラム参加者11,693人(18~70歳)のビタミンD摂取量と25(OH)D濃度、合計13,987件の実測データの統計解析
ビタミンDは、骨の健康や免疫機能などに重要な栄養素です。人間の体は、食事やサプリメント、日光によってビタミンDを得ています。また、体内のビタミンD状態を表す指標として血液中の「25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)」の量が、参考になります。
一般的に、血中25(OH)Dが50nmol/L未満だと「不足」とされます。ところが、現在のカナダやアメリカの推奨摂取量(RDA)は600~800 IU/日です。しかし近年、その根拠となる統計計算に誤りがあったことが報告され、実際はもっと多くの摂取が必要なのではないか?という疑問が生まれました。
本研究の目的は、「ビタミンDを1日どれだけ摂取すれば、血液中のビタミンD(25-ヒドロキシビタミンD, 以下25(OH)D)の濃度が低すぎず、高すぎず、適正な範囲におさまるのか?」を明らかにすることです。
具体的には、血中25(OH)D濃度が低すぎると健康リスク(骨粗鬆症など)がありますが、逆に高すぎても副作用が懸念されます。そのため、「ちょうどよい」ビタミンDの摂取量を求めることが本研究の核心です。
この研究では、以下の2つのアプローチを組み合わせています。
(1)文献レビューと統合解析(メタアナリシス)
108のビタミンDサプリメントに関する臨床研究データを集め、摂取量と25(OH)D濃度の関係を分析。
対象者は1〜70歳の健常者(妊婦を除く)で、平均値と標準偏差を抽出して回帰モデルで解析。
(2)実測データの解析(Pure Northプログラム)
カナダの予防医療プログラム「Pure North S’Energy Foundation」に参加した11,693人のデータ(13,987件)を用い、ビタミンD摂取量と血中濃度の実際の関係を分析。年齢は18〜70歳、記録された摂取量は0〜32,000 IU/日と非常に幅広い。
この2つのデータセットをもとに、どのくらいの量を摂取すれば血中濃度が目標範囲内(適正範囲)に収まるかを推定しました。
この研究から明らかになったこと
現在の推奨摂取量(600~800 IU/日)は明らかに不足している
文献レビューでは、健康な人の97.5%が血中25(OH)Dを50nmol/L以上に保つには、2909 IU/日が必要とされました。
これは、現在の推奨値(成人で600 IU/日)を大きく上回る値です。
また、実測データ(Pure North)でも、似たような結果が出ました。体格別に必要な量は以下の通りです。
- 適正体重:3094 IU/日
- 過体重:4450 IU/日
- 肥満:7248 IU/日
つまり、体格によって必要な量が大きく変わることも明確になりました。
「ちょうど良い」摂取量(過不足のリスクが最も少ない摂取量)が推定された
血中25(OH)D濃度の「自然な範囲」(58~171 nmol/L)に注目し、この範囲に入る人の割合が最も多くなる摂取量を計算しました。
その結果、以下の摂取量で最も多くの人(87%)が自然な範囲に収まりました。
- 全体平均:2745 IU/日
- 適正体重:1885 IU/日
- 過体重:2802 IU/日
- 肥満:6235 IU/日
これは「最適摂取量(optimal intake)」と呼ばれ、過剰にも不足にもならない理想的なビタミンDの摂取量と考えられます。
体格や環境により必要量は変わる
文献レビューにより、次のような影響も確認されました。
- 緯度が高い(北に住んでいる)と日照が少なく、ビタミンD濃度は低くなる傾向。
- ビタミンD2とD3の差は、文献数が少なく判断困難だが、大きな違いは見られなかった。
- 補給を始めてから血中濃度が安定するには最低でも3か月必要。
- 測定法(血液検査の方法)によっても若干のばらつきが出る。
従来のRDA(推奨摂取量)は統計計算の誤りを含んでいた
米国医学研究所(IOM)のRDAは「97.5%の人が50nmol/L以上になる」ことを前提に設定されていましたが、標準偏差と標準誤差を混同するという統計ミスがあり、実際の必要量を過小評価していたと著者らは指摘しています。
適正体重・過体重・肥満の定義について(この論文の中での扱い)
この論文では、各体格を明確に数値で定義している部分はありません。しかし、分析の中で「適正体重」「過体重」「肥満」としてビタミンD摂取量の違いを示しており、BMI(体格指数)に基づいた一般的な区分に沿っていると考えられます。
一般的なBMIの区分(本論文では記載されていないが、文脈から推定される分類)
- 適正体重(Normal weight):BMI 18.5〜24.9
- 過体重(Overweight):BMI 25.0〜29.9
- 肥満(Obese):BMI 30.0以上
※BMIとは、体重(kg)を身長(m)の2乗で割って求められる指数です。
なぜ体重によって必要な量が変わるのか?
ビタミンDは脂溶性(脂に溶ける性質)なので、脂肪組織に一部が蓄えられてしまい、血液中に残る量が少なくなるという特徴があります。つまり
- 体脂肪が多い人ほど、サプリでたくさん摂っても有効成分が血中に出てきにくい
- そのため、同じ効果を得るにはより多く摂取しなければならない
この生理的な違いを考慮し、研究ではビタミンD摂取量を体格別に推奨しています。
まとめ
- この論文では、人の体格(適正体重、過体重、肥満)によって、必要なビタミンDの量が大きく異なることが示されました。
- 体脂肪が多い人は、ビタミンDが脂肪に吸収されやすくなるため、同じ量を摂っても血中のビタミンD濃度が上がりにくくなります。
- そのため、体格に応じてビタミンDの摂取量を調整することが、健康的な血中濃度を保つうえで重要です。
この知見は、医師の指導や栄養指導の場だけでなく、サプリメントを自己判断で摂る一般の人々にもとても有用です。特に、体格が標準より重い方が一般的な推奨量(例:600 IU/日)だけを摂っても不足のままである可能性があることが、この研究から明確になっています。
という事で、結局どれだけ摂ればいいの?とツッコミが入りそうですが、要は
- 適正体重:BMI 18.5〜24.9の人は 1885〜3094 IU
- 過体重:BMI 25.0〜29.9の人は 2802〜4450 IU
- 肥満:BMI 30.0以上の人は 6235〜7248 IU
を大まかな目安として摂取していれば最適かと思われます。
別な記事でビタミンDの有用性については他のサイトなどでも紹介されていると思いますがどのくらい摂取量がベストなのかはあまり言及されていないように思います。個人的にも昼夜逆転した生活になりがちなので必須サプリの1つとしてお世話になってますね。
一応、iHerbのサプリのリンクを置いておきます。日光を浴びてもビタミンDは生成されますが、日焼け止めや日傘をさす生活になりがちなので、サプリメント嫌いの方でもビタミンDは摂取した方がよろしいかと思われます。