【サーチュイン活性化】キノコの抗酸化物質、エルゴチオネインがNMNと同様に健康寿命を伸ばすかも

エルゴチオネインは、主にキノコ類や一部の細菌に含まれる抗酸化物質です。エルゴチオネインは食品などから摂取されると、体内で特定の輸送体(OCTN-1)を介して細胞に取り込まれ、抗酸化作用や細胞保護作用を持つことが知られています。近年、この物質が老化防止や代謝改善に関与している可能性が示唆され、健康寿命を延ばす効果が期待されています。

今回はエルゴチオネインが動物段階ではありますが、健康寿命を伸ばしたよという論文があったので共有します。(R)

本論文は、エルゴチオネインが加齢に伴う健康寿命の低下をどのように改善するかを研究したものです。エルゴチオネインは、食事由来の天然チオール化合物で、近年、抗酸化作用や代謝改善効果が注目されているんですね。本研究では、線虫(C. elegans)やラットを用いた実験を通じて、エルゴチオネインが寿命を延ばし、運動能力を向上させることを明らかになったとのこと。

さらに、そのメカニズムとして、エルゴチオネインがシスタチオニン-γ-リアーゼ(CSE)という酵素の代替基質となり、水素硫黄(H₂S)の産生を促進することで、タンパク質のパースルフィデーション(PSSH)を増加させることが示されました。その結果、細胞のNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)レベルが上昇し、筋肉の機能や代謝が改善されることが分かりました。要はNMNやNRなどの代わりになるかもということなんですね。

個人的にも気になります。早速確認していきましょう。

目次

実験の概要

本研究では、エルゴチオネインが動物の寿命や健康状態に与える影響を調べるために、以下の実験を実施したとのこと。

線虫(C. elegans)への影響

寿命延長効果

  • エルゴチオネイン(450 mM)を投与すると、線虫の寿命が有意に延びた(最大寿命22→23日)。(線虫ってそもそもの寿命が短いので1日伸びただけでもすごいです)
  • 運動能力(体をくねらせる回数)も有意に向上。

ストレス耐性の向上

  • 過酸化水素(H₂O₂)、パラコート(酸化ストレス誘発剤)、ヒ素、熱ストレスに対する耐性が向上。

加齢に伴う生理的変化の抑制

  • 加齢マーカー(脂質蓄積や腸の自家蛍光の増加)が減少。
  • ミトコンドリアの形態が若い個体と類似していた(より細長く分断が少ない)。

ラットへの影響

運動能力の向上

  • 9ヶ月齢のラットにエルゴチオネイン(20 mg/kg)を3週間投与すると、持久力が約2倍に向上した(走行時間・距離が増加)。
  • 筋肉量(ヒラメ筋)が増加し、運動後の乳酸蓄積が減少。

血管の発達と筋肉の健康維持

  • 筋肉の血管密度が上昇し、酸素供給が改善。
  • 筋肉幹細胞(MuSCs)の数が増加し、筋肉の修復・再生能力が向上。

NAD+レベルの上昇

  • 筋肉中のNAD+/NADH比が有意に向上。(これは、細胞のエネルギー代謝や抗酸化能力を高める効果がある)

具体的なメカニズム

  • エルゴチオネインはCSEという酵素を活性化し、H₂Sの産生を増加させる。
  • H₂Sはタンパク質のパースルフィデーション(PSSH)を増加させ、特に細胞質型グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(cGPDH)を活性化する。
  • cGPDHの活性化により、NAD+が増加し、エネルギー代謝が改善される。
  • この効果はCSEやcGPDHが欠損した個体では消失したことから、これらの分子がエルゴチオネインの効果に必須であることが確認された。

本研究で明らかになったこと

エルゴチオネインは健康寿命を延ばし、加齢に伴う運動機能の低下を防ぐ

  • エルゴチオネインを摂取することで、寿命だけでなく健康寿命(運動能力やストレス耐性)が向上した。
  • 特に、ラットの持久力向上や筋肉量の増加は、加齢による筋力低下(サルコペニア)の予防につながる可能性がある。

エルゴチオネインの効果はCSEとH₂S産生を介したもの

  • CSEがエルゴチオネインを代謝し、H₂Sを産生することで、タンパク質のパースルフィデーションが増加する。
  • 特に、NAD+産生を担うcGPDHがパースルフィデーションされることで、その活性が向上する。

エルゴチオネインは従来のNAD+前駆体(NMNやNR)よりも効果的な可能性がある

  • これまで、NAD+の増加にはNMNやNRといった補酵素の前駆体が使用されてきたが、本研究ではエルゴチオネイン単独でNAD+レベルを上昇させることが示された。
  • エルゴチオネインの投与により、筋肉組織のNAD+レベルが上昇し、ミトコンドリアの機能や血管新生が改善された。

NAD+は、細胞のエネルギー代謝やDNA修復、老化防止に関わる補酵素です。加齢によりNAD+が減少すると、ミトコンドリアの機能低下や筋肉の衰え、認知機能の低下が引き起こされることが判明しています。今回の論文はエルゴチオネインも老化に対してNMNと同様の効果があるというところが個人的にはアツいところ。

エルゴチオネインは短期間でも効果を発揮

  • 9ヶ月齢のラットだけでなく、8週間齢のラットでも、5日間のエルゴチオネイン投与で運動能力が向上し、NAD+レベルが上昇した
  • これは、エルゴチオネインがエネルギー代謝を即座に改善し、パフォーマンスを向上させる可能性を示唆しているとのこと。

本研究で未解明な点

高齢個体ではエルゴチオネインの効果が低下する可能性

  • 加齢に伴い、CSEの発現が低下することが知られている
  • CSEが低下すると、エルゴチオネインを摂取してもH₂Sが十分に産生されず、期待される効果が得られない可能性がある。
  • CSEの発現を高める方法と組み合わせることで、より高齢の個体にも有効な治療法になるかもしれない。

CSE遺伝子変異を持つ人には効果がない可能性

  • 一部のヒトでは、CSE遺伝子に変異があり、CSEの活性が低下している可能性がある
  • この場合、エルゴチオネインを摂取してもH₂Sが十分に生成されず、効果が発揮されない可能性がある。

エルゴチオネインの過剰摂取による副作用の可能性

  • H₂Sは低濃度では有益だが、高濃度では毒性があることが知られている。
  • エルゴチオネインの過剰摂取がH₂Sの過剰産生を引き起こし、毒性を示す可能性があるため、安全な摂取量の検討が必要である。(まあ、サプリメント程度では問題ないかと)

まとめ

本研究では動物段階ではありますが、エルゴチオネインがCSEを介してH₂Sを産生し、タンパク質のパースルフィデーションを促進することで、NAD+レベルを増加させ、健康寿命を延ばすことが明らかになりました。。特に、筋肉の機能向上や血管新生の促進が確認され、加齢に伴う運動能力の低下を防ぐ可能性があるとのこと。

個人的には今後、エルゴチオネインがヒトの健康寿命延長にどこまで寄与できるかを明らかにするため、さらなる研究が期待するところですね。一応、エルゴチオネインのリンクを置いておきます。

iHerbのエルゴチオネインのサプリメントは基本的に5mgしかないのですが、25mgという化け物クラスでありながらコスパが高いものがあったので両方置いときます。私自身は可能性に賭けたい派なので25mgを取りますが、気になる人は手始めに5mgからどうぞ。

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