メトホルミンがアンチエイジングや病気の予防に使えるのか現時点で分かっている事まとめてみた

目次

メトホルミンとは

メトホルミンは、2型糖尿病の治療に広く使用されるビグアナイド系の経口血糖降下薬です。日本だと糖尿病と診断されると1番始めに処方される医薬品ですね。

メトホルミンの起源は古く、中世ヨーロッパにまで遡ります。当時、ガレガ(フレンチライラック)という植物が糖尿病の症状を和らげるために使用されていました。LIFESPAN-老いなき世界ではヨーロッパで放牧されている羊が食べる牧草という記述があります。羊達がこの作用機序を理解して食べていたらびっくりですがね。ヨーロッパの羊に聞く機会があったら聞いときます。

この植物には、後にメトホルミンの開発につながるグアニジン化合物が含まれていました。1920年代に、フランスの科学者たちがガレガの有効成分を特定し、その構造を基に新しい化合物の合成を始めました。1950年代に入り、フランスの医師ジャン・ステルンがメトホルミンの臨床試験を開始し、その有効性を確認しました。1957年にメトホルミンはフランスで初めて承認され、その後徐々に世界中で使用されるようになりました。

現在では世界中で最も処方される糖尿病治療薬の一つとなっています。

作用機序 : メトホルミンは主に以下の方法で血糖値を下げます

  1. 肝臓での糖新生(ブドウ糖の産生)を抑制
  2. 筋肉や脂肪細胞でのインスリン感受性を改善
  3. 腸からのブドウ糖吸収を遅延

使用目的 : メトホルミンは主に以下の目的で使用されます

  • 2型糖尿病の治療
  • 糖尿病前症(境界型糖尿病)の進行予防

今回の論文

メトホルミンって色々騒がれているけど現時点で判明していることと分からない事をまとめたよという論文です。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35640743/)

メタ分析から動物段階の研究までそれぞれまとめられているので、手っ取り早くメトホルミンの多面的効果を知るのに有効ですね。

個人的にはAMPK活性化目的で飲んでいるので気になるところ。

この論文は、メトホルミンが糖尿病治療以外の疾患にも有効かどうかを検討した総説です。メトホルミンは2型糖尿病(T2D)治療の第一選択薬として広く使用されており、その主な作用はインスリン感受性の改善抗高血糖作用です。一方で、がん老化神経変性疾患心血管疾患CVD)、COVID-19など、非糖尿病性疾患にも効果がある可能性が示唆されています。日本でも検索すると「メトホルミン 若返り」「メトホルミン 痩せる」などダイエット目的だったり、老化対策で調べている人が多いみたいですね。

本論文では、メトホルミンの作用メカニズム、既存の臨床データ、そして適応拡大の可能性を総合的に評価しています。早速内容をまとめたので見ていきましょう。

メトホルミンの主な効果と科学的エビデンス

糖尿病治療における役割

判明していること

  • メトホルミンはT2D患者の血糖値を効果的に下げるほか、心血管リスクを低減します。特にUKPDS(英国の大規模臨床研究)では、糖尿病関連の死亡率や全死亡率の低下が報告されました。(メトホルミンを飲んでいるT2D患者 > 健常者 > メトホルミンを飲んでいないT2D患者の順で発ガン率や死亡率が低いとのこと。メトホルミンを飲んでいる健常者ではさらに効果があるのではと思いますがそれはこの先の研究に期待ですね)
  • 妊娠糖尿病や1型糖尿病(T1D)においても、インスリンの補助薬として有効性が示唆されています。

まだ明確に分かってない不明な点

  • 長期使用時のビタミンB12欠乏症の影響について。メトホルミンを長期摂取するとビタミンB12が不足する事が分かっているのですがこの分野はまだまだ研究途中とのこと。

がん予防と治療

判明していること

  • 一部の研究で、メトホルミンが乳がんや消化器系がんのリスクを低減する可能性が示されています。この効果は、mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク)経路の抑制や、腫瘍抑制因子であるAMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)の活性化によるとされています。

まだ明確に分かってない不明な点

  • がん予防効果がメトホルミンの直接作用によるものか、血糖値低下に伴う間接的効果なのかは不明です。

老化と寿命延長

現時点で分かっていること

  • MILESおよびTAME試験(老化に注目したメトホルミンの大規模観察研究)では、メトホルミンが老化関連疾患や寿命延長に寄与する可能性が調査されています。特に、炎症抑制やミトコンドリア機能の保護がそのメカニズムとして考えられています。
  • 現時点では、老化抑制の効果を示す大規模な臨床データは不足しています。

神経変性疾患

明らかになっていること

  • 動物段階の研究において、メトホルミンがアルツハイマー病やパーキンソン病の進行を抑える可能性が示されています。これは神経幹細胞の活性化や抗炎症作用によると考えられています。

まだ明確に分かってない不明な点

  • 人間における具体的な臨床的有効性や副作用については十分に確認されていません。これはこの先の研究に期待ですね。

COVID-19と感染症

判明していること

  • 一部の研究で、メトホルミンがCOVID-19患者の症状軽減に寄与する可能性が報告されています。また、抗ウイルス効果や抗菌作用も指摘されています。

まだ明確に分かってない不明な点

  • COVID-19治療における具体的なメカニズムや有効性を支持する統一されたデータは存在しません。

メトホルミンの作用メカニズム

主な作用メカニズム

  • メトホルミンは、AMPKの活性化や肝臓での糖新生抑制を通じて血糖値を下げます。また、腸内細菌叢の変化やビタミンB12吸収への影響も確認されています。

議論点

  • 一部の実験では、臨床使用量を大幅に上回る濃度が使用されており、その結果が人間に適用可能か疑問視されています。

メトホルミンの限界と今後の課題

  • 高用量の長期使用による潜在的リスク(ビタミンB12欠乏症、腸内環境への影響)が指摘されています。
  • ライフスタイル改善と比較した際の効果の優位性は限定的である可能性があるとのこと。(要は運動したり、バランスの良い食生活した方が効果あるんじゃね?ということ)
  • 非糖尿病性疾患への適応拡大にはさらなる大規模臨床試験が必要とのこと。
  • 環境への影響(内分泌撹乱物質としての役割)についての研究も必要とのこと。(環境ホルモンのリスク)メトホルミンは代謝されずに排出されるからですね。

結論

今回の論文はメトホルミンが糖尿病治療において中心的役割を果たし、他疾患にも応用可能性を持つ多面的な薬剤であることを示唆していますね。一方で、研究の質がバラついていたり、その効果の一部はまだ確立されておりません。特に非糖尿病性疾患での使用に関してはさらなる研究が必要です。健常者での研究は実施されている最中ですし、病気の1次予防やアンチエイジング目的で飲むにはまだ確証が得られるほどデータが集まってはいないのと長期服用でのビタミンB12の不足リスク乳酸アシドーシス(血液の酸性化、アルコールとメトホルミンを同時に摂取するとなりやすい)などのリスクを天秤に掛けると常飲して摂取するのには時期尚早ですね。そもそも、どのくらいの量をどれくらいの頻度で飲むのが判明していないのでその点もデータが欲しいところです。

それでも可能性に賭けて飲みたいという人はビタミンB12のサプリと併用アルコール摂取時は飲まないなど注意して飲むって感じですかね。(斯くいう私自身もその1人です。)

一言で言うなら、データ不足なんで人に勧めないけど可能性に賭けて飲みたい人は自己責任でどうぞという事に落ち着きそうです。

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