個別株投資家みんな違うこと言ってない?
積立投資をしている人だったり、メディアなどで株式投資についての情報を見聞きしている人の中にはインデックス投資とアクティブ投資の2種類に大まかに分けて考えている人が多いと思います。
インデックス運用している人の中にはアクティブ運用している人を軽蔑している方もいます。投資の神様ことウォーレン•バフェットは卵を複数の籠に分けるインデックス投資を「無知を保護する手段」と言い切り、彼自身は複数の卵を一つの籠に入れてしっかり見守る方式を採っています。無知で卵を見守る余裕がない人間はインデックスが最適だと思います。無知なことを自覚しているのにさぞ博識かのようにアクティブ運用している人に対して物申している人はなんとも皮肉なものです。アクティブ運用の人が一定数いるから市場の歪みが解消されてインデックス運用が成り立っている側面があるので軽蔑するのは違うと思います。
今回はその先のアクティブ投資をしている人の中でも大まかに3タイプに分けられるという話をします。インデックス投資から個別株に興味がある人や「投資系のインフルエンサーの人みんな違うこと言ってない?」のように混乱している人の頭の中を整理出来たらと思って書きます。
個別株投資家は大きく3タイプ
今回伝えたい事はまさに個別株投資家は3タイプいるということです。
どういう事だと思った人に詳しく説明するとバリュー株投資(割安株)、グロース株投資(成長株)、モメンタム株投資の3タイプいてそれぞれが自分の投資手法から各々の個別株について意見をしているのです。
それぞれの投資の特徴について解説します。
バリュー株投資(割安株)

まずはバリュー株投資についての解説です。
バリュー株投資とは割安だと判断される株式を購入し、その価値が市場に正しく評価されるまで待つという投資手法です。
バリュー株は、現在の株価が企業の本来の価値に比べて低いと考えられる株式のことです。
企業の価値を測る指標として、PERやPBR、EV/EBITDA、グレアム指数といったものがあります。
他にも割安度を示す指標はたくさんありますがそれぞれ一長一短なのでバリュー投資家の中には様々な指標を組み合わせている人もいます。
個人的な偏見ですが倹約家が多いイメージです。人によっては度を越した節約に一種の快感を覚えている人もいる気が、、、
なぜ割安な株があるの?
市場では、以下の理由で一部の企業が過小評価されることがあります。
- 一時的な業績不振(将来的には回復する可能性がある)
- 市場の関心が薄い(話題性が少ない業界や企業)
- 不安要素が過剰に評価されている(景気悪化や特定リスク)
こうした企業の中から実際には価値があるのに低く評価されている株を見つけるのがバリュー株投資です。
バリュー株投資のメリット
- 長期的に安定したリターンが期待できる : 割安な株価で購入するため、価値が評価されると大きな利益を得られる可能性があります。
- リスクが比較的低い : 既に株価が下がっているため、追加の下落リスクが小さいことがあります。
バリュー株投資のデメリット
成長が期待できない企業を避ける : 割安だと思っても、業績が悪化し続ける企業は注意が必要です。
時間がかかる : バリュー株は市場で再評価されるまでに数年かかることがあります。
バリュー株投資の有名人
ベンジャミン・グレアム(Benjamin Graham)
バリュー投資の父と呼ばれる人物。株式の本質的価値に基づく投資哲学を確立しました。
安全域(Margin of Safety)の概念を提唱し、低PERや低PBRの企業に注目して独自のグレアム指数を生み出しました。
ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)
バークシャー・ハサウェイを率いる世界有数の富豪。別名 : 投資の神様
グレアムの教えを発展させ、優良企業を長期的に保有する投資手法を貫く。
チャーリー・マンガー(Charlie Munger)
バフェットの右腕で、バークシャー・ハサウェイの副会長。2023年に逝去されました。
定量分析だけでなく、心理学や哲学を駆使して投資判断を行っており、割安さより優良銘柄を適切な値段で購入することの大事さを説いていました。
若かりし頃のバフェットがシケモク株(超割安株)に投資していた際に現在の投資手法に飛躍させたのは有名な話。
グロース株投資(成長株)

次にグロース株投資についての解説です。
グロース株投資とは成長性の高い企業の株式に投資し、その成長によって株価が上昇することで利益を得る投資手法です。
グロース株とは業績や収益が今後大きく成長すると期待される企業の株式を指します。
企業の成長を図る指標として売上成長率やEPS成長率などがあります。
個人的な偏見ですが意識が高い人が多かったり、情報感度の高さから新しい技術や革新に夢を抱いている人が多いイメージです。稀に夢と現実の違いが分からない人も、、、
グロース株の特徴
グロース株は通常、次の特徴を持っています。
革新的なビジネスモデル : 新しい技術やサービスで市場をリードしている。
高い成長率 : 売上高や利益率、(EPS)一株当たり当期純利益が高い成長を記録している。
グロース株投資のメリット
大きなリターンが期待できる : 成長企業の株価は短期間で大幅に上昇することがあるため、他の投資手法に比べて大きな利益を得られる可能性があります。
市場を上回るパフォーマンス : 成長性の高い企業は市場全体よりも高い収益成長を見せることが多いです。
グロース株投資のデメリット
株価変動が大きい : 成長期待に基づいて株価が動くため、業績が期待を下回った場合には急落するリスクがあります。また業績が良くても、長期金利に左右されるのでそれも注意です。
配当が少ないことが多い : 多くのグロース株は、利益を成長のために再投資するため、配当金を支払わない場合が多いです。
高い株価バリュエーション : PER(株価収益率)などの指標で見ると、割高とされることが多いです。これは将来の成長が株価にすでに織り込まれているためです。
グロース株投資の有名人
ウィリアム・オニール(William J. O’Neil)
成長株投資で有名なアメリカの投資家で、CAN SLIMを開発した人物です。彼の手法は、100年以上の急成長した株式を分析して、いくつかの共通点をまとめたものです。
利益成長や市場動向を重視しており、彼が創刊したInvestor’s Business Daily(IBD)は、投資家向けの金融新聞で、株式市場の分析や「CAN SLIM」に基づく銘柄情報を提供しています。
ピーター・リンチ(Peter Lynch)
米国の伝説的なファンドマネージャー。フィデリティ・マゼラン・ファンドを運用し、13年間で年率29%の驚異的なリターンを達成。
成長株に積極的に投資し、「日常生活から投資のヒントを得る」手法で知られる。彼の娘さんの当時好きな飲料メーカーに投資して株価が10倍以上に跳ねたのは有名な話。
フィリップ・フィッシャー(Philip Fisher)
フィリップ・フィッシャーは、「成長株投資の父」と呼ばれる長期投資家で、ファンダメンタルズ分析を重視するスタイルで知られます。著書『株式投資で普通でない利益を得る』では、企業の研究開発力や経営の質、長期的な成長性に注目し、成長企業の見極め基準を提唱しました。ウォーレン・バフェットは「私の85%はグレアムから、残りの15%はフィッシャーからできている」と語っています。短期的な値動きよりも、企業の本質的な価値に投資するアプローチが特徴です。個人的に私淑している投資家です。
モメンタム株投資

次にモメンタム株投資についての解説です。
モメンタム株投資とは、株価が勢いよく上昇している(または下降している)トレンドに乗り、その勢いが続く間に利益を得ようとする投資手法です。
モメンタム(Momentum)とは、「勢い」や「動き」を意味します。株式市場では、株価が上昇(または下降)する勢いが続きやすいという特徴があります。
この手法では、勢いのある株はさらに上がるという仮定に基づき、価格が上昇している株を買い、一定期間保持して利益を得ることを目指します。
モメンタムを図る指標としては移動平均線や出来高、VWAPなど様々あります。大まかに、トレンド系とオシレーター系の2種類(どちらにも属するものと属さないものもある)に分類されています。
グロース株がファンダメンタル分析重視なら、こちらはテクニカル分析寄りといったイメージです。また、モメンタム投資家 ≒ トレーダーというイメージでモメンタム投資家が時間軸が長い投資、時間軸が短いトレードをしているのがトレーダーと認識しています。
個人的な偏見ですがバリュー投資家が倹約家なら、モメンタム投資家は浪費家のイメージがあります。服装が派手気味だったり、インスタがキラキラした方が多いイメージですね。
モメンタム株の特徴
株価のトレンドが明確:上昇トレンド(または下降トレンド)が強い。
出来高が増加している:取引量が増えており、注目度が高い。
モメンタム株投資のメリット
短期間で利益を得やすい : 上昇トレンドに乗ることで、短期的に利益を上げられる可能性があります。
市場の流れに沿う : 市場全体の勢いを活用するため、大きなトレンドに乗りやすい。
モメンタム株投資のデメリット
短期的な対応が求められる : 上昇していた株価が突然下落することがあります。勢いがなくなったタイミングを見極めるのが難しいです。素早い意思決定が必要で、株価を頻繁にチェックする必要があります。
割高株を掴む可能性 : 勢いのある株はすでに高値になっていることが多く、上昇余地が限られている場合もあります。
モメンタム株投資の有名人
ジェシー・リバモア(Jesse Livermore)
20世紀初頭の伝説的トレーダーで、短期売買やモメンタム投資の先駆者。市場心理を重視し、トレンドを徹底的に追うスタイルで大成功を収めました。1929年の大恐慌では空売りで莫大な利益を得たことで知られます。一方、リスク管理の重要性を学ばせる人物でもあり、彼の波乱万丈な人生は『欲望と幻想の市場』で描かれています。
ニコラス・ダーバス(Nicolas Darvas)
ニコラス・ダーバスは、プロダンサーから成功した個人投資家に転身し、ボックス理論で有名です。この手法は、株価が一定の範囲(ボックス)を超えた際に買い、勢いが続く間は保持するというモメンタム投資戦略です。彼は株価チャートと価格の動きを重視し、トレンドに基づいた取引を好みました。著書『株式市場で 200 万ドルを稼いだ方法』では、彼の独自の戦略が詳しく解説されています。
マーク・ミネルヴィニ(Mark Minervini)
成長株投資とモメンタム戦略で成功した著名な投資家。株式コンテスト「全米投資チャンピオンシップ」で圧倒的なリターンを記録しました。「SEPA(Specific Entry Point Analysis)」と呼ばれる独自の投資手法を開発し、成長性とタイミングを重視した戦略が特徴。著書『ミネルヴィニの成長株投資法』でその手法を詳細に解説しています。
まとめ

大まかに3タイプに分けていますが、全ての投資家がこの3タイプに分けられる訳ではありません。人によっては割安×成長や成長×モメンタムなどの3タイプを組み合わせた複合タイプもいます。なんなら、割安×成長×モメンタムの全てを掛け合わせた種類の投資家もいます。斯くいう私もこのタイプです。
大事なのは複合タイプの投資家もいるという事ではなく、各々の個別株投資家にはそれぞれ重要視している要素があるということです。複合した投資手法を用いている人でも3タイプのうちの1つを土台とした上で他の手法を取り入れているのです。どの要素に比重を置いた立場で個別株投資家やファンドが発言しているのか頭に入れていると個別株投資を理解する上で理解が進みやすいと思います。厄介なのは人によって重要視している要素が変化することです。私自身も長期金利が高い時と低い時でバリューとグロースの比重を変えています。また、手法を改良させる上で比重が変化する複合タイプもいます。それもまた、その投資家のスタンスが分かると投資の勉強をする上で自分の向いた手法を確立するのに役立つでしょう。
投資を始めて、インデックス投資で満足する人もいれば、インデックス投資に退屈さやリターンへの不満を抱くことによりスマートベータのようなアクティブ投資や個別株に挑戦する人もいます。その中であなたに合った投資手法を見つける手助けになれば幸いです。