今回、メトホルミンの摂取タイミングでメトホルミンの効果が変化するよという論文がありました。(R)
メトホルミンを様々な理由で飲んでいる人が大勢いると思います。私自身もAMPK活性化目的で飲んでいるので気になるところ。さて、見ていきましょう。
研究の背景と目的
メトホルミンは2型糖尿病治療の第一選択薬として広く用いられており、血糖降下作用は主に肝臓での糖新生抑制によるとされています。しかし、近年の研究で、メトホルミンの腸管作用やGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の分泌促進がその効果に大きく寄与することが示唆されています。今回の論文は、メトホルミンの投与タイミング(食前または食事時)が血糖値、GLP-1、およびインスリン応答に与える影響を調査し、最適な投与タイミングを明らかにすることを目的としたものとのこと。
GLP-1は近年リベルサスなどで単一の薬が出るほど素晴らしい血糖降下作用を持つホルモンです。
実験概要
- デザイン: 二重盲検、ランダム化、クロスオーバー試験
- 対象者: 2型糖尿病患者16名(平均年齢69.9歳、BMI 28.7、HbA1c 6.6%)
- 手法
1. メトホルミン1,000mgを腸管内に直接投与するタイミングを、-60分、-30分、0分、または対照群(生理食塩水)の4条件で実施。
2. 投与後、標準化されたグルコース溶液(12.56kJ/分)を腸管内に60分間連続投与。
3. 120分間の間に血糖値、GLP-1、インスリン濃度を30分ごとに測定。
4. 副作用(吐き気や食欲変化)の評価をビジュアルアナログスケールで実施。
簡潔に言うと2型糖尿病患者16名を対象に、メトホルミンを腸管に直接投与するタイミング(60分前、30分前、直前、対照群)による効果を比較したということ。この試験では投与後、一定量のグルコース溶液(ブドウ糖が溶けた水)を腸管に60分間連続投与して、120分間にわたり血糖値、GLP-1、インスリン濃度を測定しました。また、副作用として吐き気や食欲変化も評価しました。この試験で、メトホルミンの投与タイミングが血糖降下やGLP-1分泌に与える影響を調査したんですね。
判明したこと

血糖値の変化

- メトホルミン投与群(60分前、30分前、直前)は対照群よりも有意に血糖値が低下。(要はメトホルミンは血糖値を下げたとの事)
- 特に、60分前および30分前の事前投与で最も顕著な血糖降下効果が得られた。
GLP-1分泌の促進

- GLP-1分泌は、-60分および-30分投与で有意に増加。
- 直前投与ではGLP-1の増加は確認されなかった。
インスリン応答
- メトホルミンはインスリン感受性には影響を与えなかったが、血糖刺激性インスリン分泌を増加。
- インスリン濃度の増加はすべての投与条件で観察され、特に-60分と-30分投与が強い応答を示した。
副作用の評価
- 吐き気や食欲変化はすべての条件で最小限であり、メトホルミンの投与タイミングによる有害事象の差は認められなかった。
判明しなかったこと
GLP-1分泌の正確なメカニズム
- GLP-1分泌が増加した背景として、メトホルミンが腸管での糖吸収を抑制し、下部腸管のL細胞により多くのグルコースを到達させた可能性が示唆されるものの、詳細なメカニズムは未解明とのこと。
長期的な効果
- メトホルミンの投与タイミングが長期的な血糖コントロール(HbA1c)や合併症リスクに与える影響については不明。
他の剤形への応用可能性
- 本研究では腸管内への直接投与が行われたため、経口投与や遅延放出型メトホルミンで同様の結果が得られるかは不明。
結論
本研究は、メトホルミンを食事の30~60分前に投与することで、血糖降下作用およびGLP-1分泌促進効果が最大化されることを示しました。これにより、メトホルミンの投与タイミングが糖尿病治療の効果を左右する重要な要因である可能性が示唆されるとのこと。従来の食事とともに投与する方法では、食後の血糖降下効果が十分に発揮されない可能性があると今回の論文は指摘しているんですね。また、検証人数が少ないのが気になる点ですね。経口剤での検証や長期的な臨床効果の評価が気になるところです。
この話の肝はメトホルミンを飲んでから作用するまでタイムラグがあるということです。もちろんですが、お医者さんから処方されている人は処方された通り飲んでください。
今回の論文を読んでみて、個人的には食事30分前が最適だと思いました。メトホルミンを処方以外で飲んでいる人が居たら今回の論文は参考になると思いますがあくまで自己責任でどうぞ。