Nature、Scienceとともに世界三大科学誌に数えられており、ライフサイエンス分野における世界最高峰の学術雑誌であるCellから老化に対してアプローチ出来て尚且つ若返りのプロセスが明確になっている論文がありました。(R)
こちらは、過去に行われたアンチエイジング研究の成果を徹底的に調べ直したものであり、
- 3つ以上の大学で、実験条件を厳密にコントロールした論文が発表されている
- ヒトを含む3種類以上の動物で効果が確認されている
- 体を若返らせるメカニズムが明確に解明されている
など、非常に厳しい基準で数多くの薬や習慣が評価されています。
メタ分析で明らかになった事
運動
定期的な運動は、げっ歯類や人間で罹患率や死亡率のリスクを減らすことが示されており、人間では特に心血管疾患、糖尿病、骨粗しょう症など老化に伴う疾患に有益です。高齢者では有酸素運動が血圧、脂質、耐糖能、骨密度、うつ病などに良い影響を与え、生活の質を向上させます。ただし、高齢者では過度な運動が死亡率の増加と関連するため注意が必要です。また、運動はサルコペニアの予防や改善にも有効とされています。
一方で、運動が寿命を延ばすことは確認されておらず、カロリー制限と組み合わせても寿命延長には追加効果が見られません。しかし、運動とカロリー制限は異なる分子メカニズムを持つため、両者の組み合わせは健康促進に相乗効果をもたらす可能性があります。具体的には、運動とカロリー制限を組み合わせることで、インスリン感受性の向上や炎症マーカーであるC反応性タンパク質の低下が確認されています。
この論文によれば、人類の進化の視点で考えると、空腹が運動を促し、狩りなどの行動につながる可能性があるそう。さらに、運動と断食の組み合わせは筋肉量維持にも有益です。ただし、運動とカロリー制限がともにオートファジーを誘発することから、両者が部分的に関連するメカニズムを共有している可能性があるとのこと。
老化にはアプローチ出来るけど寿命は伸ばさないとのこと。あくまで適度な運動であり、体に負荷をかけ過ぎない事も大事なようですね。
カロリー制限 (Caloric Restriction)
カロリー制限は多くの動物モデルで寿命延長と健康寿命の向上をもたらしました。具体的には、成長ホルモンやインスリン様成長因子1(IGF1)の低下、ストレス耐性の増強、オートファジー(細胞内クリーニング機能)の促進が関与しています。
この論文では人間では沖縄の高齢者が代表例として挙げて、低カロリーと運動の組み合わせがより長寿に有効だとのことです。
しかし、30%のカロリー制限の研究は副作用(不妊や骨粗鬆症)の問題指摘しています。
副作用の点をみても明らかなように人によっては向かないアンチエイジング戦略ですね。
断食(Fasting)
断食は、加齢関連疾患(神経変性、がん、心血管疾患)のリスクを低下させる可能性が示されています。たとえば、断食サイクルはマウスモデルでアルツハイマー病やパーキンソン病などの影響を軽減し、一部の腫瘍においては化学療法と同等またはそれ以上の効果を持つことが報告されています。さらに、短期間の断食は化学療法の副作用を軽減し、効果を高める可能性があるとされています。
また、水のみで行う断食は高血圧の改善に特に効果的で、医師の監督下での実験では、血圧が正常範囲に戻る例が多数報告されています。断食は肥満やメタボリックシンドロームの改善、インスリン感受性の向上、酸化ストレスの軽減にも寄与する可能性があります。ただし、肥満は加齢性認知症やアルツハイマー病のリスクを高めるとされる一方、中程度の肥満が保護的に働く場合もあることが示唆されています。
一方で、断食の効果は地中海式や低タンパク質ダイエットなど健康的な食事との組み合わせに依存する可能性が高く、単独では限られた効果しか発揮しない場合もあります。また、断食は子どもや体重不足の人、一部の病状を持つ人には有害となる可能性があり、慎重に行う必要があります。医師の指導下での実践が推奨されます。
周期的断食(間欠断食)は、カロリー制限の代替として注目されており、心理的負担や副作用が少ない上、代謝やホルモン状態を改善する可能性があります。特に断続的な絶食と食事のサイクルが、慢性的なカロリー制限の副作用を避けつつ、老化関連疾患を予防する効果が示唆されています。しかし、これらの戦略がヒトの寿命にどの程度寄与するかは明らかになっておらず、カロリー制限や断食が加齢に伴うエピジェネティック変化や老化プロセス全体にどのように影響するのか、さらなる研究が必要です。
断食も様々な周期で行う物がありますが今回の論文では全体的に有効であるとのことですね。
薬物療法における老化抑制の可能性
薬物療法は、カロリー制限や断続的断食と並び、老化抑制の研究で注目される分野の一つです。今回の論文では、以下の化合物が老化に関する研究で特に有望であるとされています。
レスベラトロール
レスベラトロールはブドウや赤ワインに含まれるポリフェノールで、酸化ストレス軽減や代謝改善効果が注目されています。
動物モデルの効果
酵母、線虫、ショウジョウバエで寿命延長効果が確認されました。
高脂肪食摂取マウスにおいて、炎症の抑制、膵臓の機能維持、血管機能の改善が観察されました。
ただし、通常の食事を摂取しているマウスでは寿命延長効果は見られませんでした。
メカニズム
CRと類似の代謝的効果を示し、NAD+依存性脱アセチル化酵素SIRT1に影響を与えると考えられています。ただし、直接的な結びつきには議論があります。
人間での効果
限定的な研究ながら、インスリン抵抗性の改善や心血管機能の保護が示唆されていますが、寿命延長効果を裏付けるエビデンスは不足しています。
ラパマイシン
ラパマイシンはmTOR(エムトア)と呼ばれる酵素を阻害することで知られる化合物で、老化抑制効果が広く研究されています。
動物モデルの効果
酵母、ショウジョウバエ、線虫、マウスにおいて寿命延長が確認されています。特に中年マウスでラパマイシン投与が寿命延長に寄与することが報告されています。
副作用と課題
ラパマイシンは免疫抑制作用が強く、長期使用により創傷治癒の遅延、タンパク尿、肺炎などの有害事象が生じます。また、インスリン抵抗性や糖尿病を誘発する可能性もあります。
新たな研究動向
ラパマイシンの間欠的投与が副作用を軽減しつつ寿命延長効果を維持できる可能性が示されています。また、がん治療薬としても使用されています。
スペルミジン
スペルミジンは天然に存在するポリアミンで、オートファジー(自食作用)を誘導することで寿命延長効果を持つとされています。
動物モデルの効果
酵母、ショウジョウバエ、線虫で寿命延長が確認されています。また、マウスでは神経変性疾患モデルにおいて運動機能の改善や病理的症状の軽減が見られました。
メカニズム
スペルミジンはヒストンアセチル化を抑制し、オートファジー関連遺伝子の発現を制御することで寿命延長をもたらします。
人間での可能性
スペルミジン濃度は加齢に伴い減少しますが、長寿者では高いレベルが維持されていることが観察されています。長期的な摂取による効果はまだ不明です。
iHerbで売られているスペルミスのサプリメントで現状、量と値段のバランスが1番優れていたもののリンクを置いときます。
メトホルミン
メトホルミンは2型糖尿病の治療薬として広く使用されており、老化抑制効果も期待されています。
動物モデルの効果
メトホルミンはマウスの寿命を延ばすことが確認されており、特に乳腺腫瘍の発症率が高いマウスでの効果が顕著です。
メカニズム
メトホルミンはAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、酸化ストレスや慢性炎症を軽減します。また、ミトコンドリア機能を介して酸化的損傷を防ぐ可能性があります。
人間での研究
メトホルミンの摂取により、CRに類似した遺伝子発現プロファイルが見られることが報告されています。ただし、人間における寿命延長効果はさらなる研究が必要です。
メタ分析で明らかになった老化を抑制する薬の共通点
上記の化合物は、特に動物モデルでの寿命延長や健康寿命の改善に一貫した効果を示しています。
メカニズムとして、オートファジー誘導、インスリン/TOR経路の調整、抗酸化ストレス応答の活性化などが共通していることが分かっています。
不明な点やこれからの課題
人間での長期的効果:動物での効果が人間に適用可能かは依然不明です。特にラパマイシンやスパーミジンの長期使用による安全性と有効性についてのデータが不足しています。
副作用の克服:ラパマイシンなどの高用量投与による副作用は未解決の課題です。
社会的普及の可能性:これらの薬物がどの程度社会的に受け入れられ、実際の老化抑制に役立つかはさらなる調査が必要です。
結論
老化研究は健康寿命の延伸を目指して進展しています。カロリー制限、断食、運動、薬物療法は有望ですが、特に人間での適用に向けた実証研究が必要です。レスベラトロール、ラパマイシン、スペルミジン、メトホルミンは寿命を延長する事が確認されています。薬物療法は老化抑制における有望な手法ですが、人間への適用には多くの課題が残っています。動物実験で得られた知見を基に、長期的な安全性と有効性を確認する臨床試験が必要です。さらに、これらの化合物が社会的・倫理的にどのように受け入れられるかも検討する必要があります。
個人的にここに書かれている化合物を副作用のリスクを承知して摂取していますが老化が抑制されているかはイマイチ分かりません。(まだ20代というのもありそう)しかし、メトホルミンは1000mgを超えて飲むとお腹が緩くなりやすいのとラパマイシンは風邪をひいている時に飲むと風邪が悪化して死にかける(多分60代以降のある程度サルコペニア進行している体力がない時なら死んでた)といったことはありましたね。
自分の場合は可能性に賭けて飲んでいますが人には勧めませんね。勧めるとしたら、副作用のリスクのない、レスベラトロールとスペルミジンですね。レスベラトロールはサプリ、スペルミジンはサプリでも良いですが、納豆に多く含まれるので納豆を定期的に摂取すれば良いと思います。特にひきわり納豆が含有量が多いとのこと。因みにスペルミジンの匂いは匂いは男性の○液に酷似するそうです。歓迎される匂いではありませんが、作用機序が判明していて寿命延長や老化対策出来る物資は限られているのでトレードオフといったところでしょうかね。
ということで今回はこのへんで。